てらいがない  オステリア・フランチェスカーナ

「オステリア・フランチェスカーナ」で食べながら、浮かんできたのは、二つの言葉だった。
てらいがない」と、「料理の可能性」である。
今世界中では、新しい料理が次々と生まれている。
今までこの食材はこうして食べてきたけど、発想を変えてみよう。
この郷土料理を、最新技術を使って再構築したらどうなるだろうか。
誰でも知っているこの料理や食材を、見たこともない形に変えたら、驚くだろうな。
様々な考えや意思が導入されて、人跡未踏の料理は生まれていく。
いただいた料理もまた、今まで食べたことがある食材であり、料理であったりしながら、初めて出会う姿であり味だった。
しかしそこには、上記のような意識が、まったくもって感じられない。
もっと純粋にこの料理はもっと美味しくできないだろうかと常に考え、あらゆる常識を捨てて、子供の目で食材と向き合って考え出された勢いがある。
自分と食材に対して、限りなく素直で、さりげない。
食べながら、食材と自分が、裸で向き合っているような初々しい感動を呼ぶのである。
料理は突飛ながらも、てらいがなく、自然なのである。
そんな素敵な、11皿の料理の前半を。
「オステリア・フランチェスカーナ」で○赤ペペローニとウサギの煮込みのマカロン
Parmesan crispy batons モデナ南部の郷土料理 ”ボルレンギ“
  生地をスプレーでフライパンに吹き付けてぱいぱいに焼いたもの。かなり熟成したものなのだろう。食感は軽やかなのに濃厚である。
○タラとケッパーのスナック
○“Sardine not sardine” 一見サーディンのように見えるが、カタクチイワシのように装飾された鰻のクリームのサンド
Aula in carpione
酸味をきかせたcarpioneのアイスと Aula fishという日本にはいない淡水魚の骨をフィリングで挟み揚げたもの (フィッシュ&チップスのオマージュ)。 ピエモンテ州の郷土料理carpioneの再構築
 洗練された味わいを噛み締めていくと、イタリア人でもないのに郷愁がよぎる。
Insalata di mare
サラダの中心部にエビ、イカ、タコ、ムール貝のスライスとチップスが挟み、海苔とベルガモットのスプレーをかけた料理。様々な香りが口の中で弾ける楽しさ。
Un’ angulla risale il frume po river
真空調理した鰻にバルサミコ酢トの原料「サバ」を塗り香ばしく焼いたもの。 マントヴァのイメージを低温調理されたりんごのソースとヴェネト州のポレンタの焦がしソースで、溯るイメージを焦がし玉ねぎのパウダーで表現。別名「ボー川を遡る鰻」。
鰻が川を遡りながらトウモロコシと玉ねぎをお供に旅に出て、リンゴやサバと出会う物語を表現しているという。
ふんわりとした柔らかい鰻に、リンゴの爽やかな酸味、ほのぼのとしたポレンタの温かみ、サバの甘酸っぱさとコクが抱き合って、軽やかで可憐な味わいになる。惚れた。
Riso verde su marrone su nero
carnaroli riceを使った3色のリゾット、 作り方は古典的なリゾットの作り方ではなく、炒めてから固めに炊くのだという。 グリーンはイタリアンパセリや芹、茶はポルチーニ、黒は貝やイカスミで、 すべてを混ぜて食べる事を勧められる。
僕はどこにいるのだろう。そう思った。様々な香りや味わいを含んだ米が通り過ぎる。それらは異国の風味を明らかに伴っているのだが、イタリアの米料理のような異国感がなく、懐かしい僕らの知っているご飯の旨みがあって、そのアンビバレントな感覚に心が喜びながら揺れている。
Autumn in New York
jAZZ好きのマッシモ シェフがビリー ホリディの曲を聴きながらイメージが湧いた一皿。 ニューヨークのマーケットを散歩して目に入るものをイメージしてデザインしたという。 林檎とジャガイモ(ポムドテール 大地のりんご→じゃがいも) 、スイカ、メロン、ズッキーニ、ビーツ等。
 微かに昆布と醤油も使われたリンゴのソースが注がれるが、どこまでも優しく、置かれた野菜や果物をそっと押し上げる塩梅、静かな料理。
Civet,selvaggina,lumache, erbe e ravioli
ゲームヘンとエスカルゴ、ハーブのラヴィオリ。一見サラダかと思ったが、葉類をどけるとジビエ類とエスカルゴを冷たラビオリが現れる。ゆっくr糸噛んでいくと、まずエスカルゴのホロ苦味が滲んだ森の入り口に着いたことを知り、さらに噛んでいくとジビエの複雑な旨みが湧き出でて、森の奥に連れて行かれる。そこで息を吸えば、ハーブが香って、人の手に汚れていない森の精錬な空気を得る。歯類を噛めば、一度人の里に戻り、ラヴィオリを食べれば、森の奥へといく。自然と里を行きつ戻りつ感謝を深めていく。自然への敬意に満ちた一皿。
Cinque staionature del parmigiano Reggiano in diverse consistenze e temperature
前出したスペシャリテ、五種類のパルミジャーノ